大穴を降りていく2人

ドレファス「…謎の大災厄によりダナフォールが滅亡した原因を究明・検分せよとの陛下の命令ではあるが…」

ヘンドリクセン「とても信じられないよ　六年前までこの大穴の真上に国が盛え大勢の人々が住んでいたなんて　隕石でも落ちたのかな？」

ドレファス「隕石とは考えにくい　何よりこの大穴からは魔力の残存を感じる…」

ヘンドリクセン「！！　…まさか何者かが作った穴なんて言うんじゃないだろうな？」

ドレファス「どちらにせよ人智の及ばぬ存在の仕業に違いない」

ヘンドリクセン「それにしてもこの穴はどこまで続いているんだ？」

ドレファス「全く帰りが思いやられるな」

底に着いた2人

上を見上げるヘンドリクセン「…入口があんなに小さい…」

ドレファス「…しまった！明かりを忘れた」

ヘンドリクセン「やれやれ…具体的な情報も手がかりもなし　おまけの真っ暗闇　正に暗中模索だな」

「…」

ヘンドリクセン「ドレファス！聞こえたか？」

ドレファス「ああ…呻き声にも風の音にも聞こえたが」

ヘンドリクセン「まさか大災厄で生き残った人間がここに…？」

ドレファス「さあて…幽霊かもしれんぞ」

ヘンドリクセン「わんぱく三人組が聞いたら喜びそうな話じゃないか？」

ドレファス「ギルとハウザーはな…グリアモールは号泣して漏らすぞ　だが互いの顔も見えないようじゃ捜す物も捜せんな」

ヘンドリクセン「仕方ない…帰ったらエールをおごってもらうよ」

ドレファス「？　ヘンドリクセンそれはどういう…」

呪言の玉を取り出し光をともすヘンドリクセン

「…れ…か」

ヘンドリクセン「ほら…！確かに人の声だよ…！」

ドレファス「ああ…だが一応気をつけろ　しかし用意がいいというか全く几帳面な奴だよ」

ヘンドリクセン「出発する前にマーリン殿にもらったんだ」

ドレファス「そういえばお前は暗闇が苦手だったな」

ヘンドリクセン「原体験ってやつさ…幼少時、ドルイドの里で暮らしていた頃のね」

ドレファス「たしかドルイドは女が女神の使徒で男がそれを補佐する司祭になるんだっけ？」

ヘンドリクセン「それはほんの一部だよ　ほとんどは一信徒さ　俺もそうだった

子供時代はいつも死者の埋葬の番をさせられたな…　自然ならざる魂を得て死体が蘇らないよう完全に骨になるまで毎晩見張りをするんだ

俺はそれが嫌で…一刻も早く死体の側から離れたくて」

ドレファス「それで “腐蝕(アシッド)” に目醒めたんだったな」

ヘンドリクセン「ああ、この魔力のおかげで “臆病者”  “呪われた子” と里ではさんざ嫌われ　ヘンディ少年は里を追放されたわけさ」

笑うドレファス

ヘンドリクセン「笑うかな」

ドレファス「ヘンドリクセン　お前は臆病者なんかじゃない　ただ優しいだけだ」

ヘンドリクセン「ドレファス…変なものでも食べたのか？」

ドレファス「真面目に聞け！お前なら必ず立派な聖騎士長になれる！！俺も兄貴も陛下も皆そう思ってるんだ」

ヘンドリクセン「ちょ…ちょっと待て！俺は聖騎士長の器なんかじゃない！！

大体ドレファス…聖騎士長を目指しているのはお前だろ！？」

ドレファス「ハッハッハッ　たしかに一時は目標にしていた　でも違った

俺が目指すのは王国と平和を守る最強の聖騎士だ　そして息子の…誇りであり続けることなんだよ」

ヘンドリクセン「…ドレファス　案外子供っぽいんだな」

ドレファス「な…なんだと？」

ヘンドリクセン「…でも羨ましいよ」

ドレファス「まぁ兄貴がいる限り俺が最強の聖騎士になる日もお前が聖騎士長になる日も遠い話だろうけどな！」

ヘンドリクセン「ハハハ違いない」

「ならば…その宿願を叶えよう」

ドレファス「この気配…人間のものではない！」

ヘンドリクセン「ドレファス…そこにいる！！」

ヘンドリクセンの指差した先には肉塊が転がっている

「人間よ…我にその体差し出さば汝らの望み叶えよう…」

ドレファス「なんなんだこいつは？人間でも…妖精族でも巨人族でもない…！！」

ヘンドリクセン「この凶々しい魔力　ま…間違いない　伝承にある魔神族だ！！…まさかダナフォール消滅の原因はこいつ！？」

ドレファス「断定はできんがそう考えるのが妥当だろう…　残念だな魔の者よ　お前は頼む相手を間違えたようだ」

魔神族「ならば力づくでも手に入れるまでよ…！！」

ドレファスの中に入る魔神族

のけぞるドレファス「…っ　く…はは…」

ヘンドリクセン「…！」

ドレファス「どうした？俺を乗っとるつもりじゃなかったのか？」

魔神族「これは驚いたな　我の操心の術が及ばぬ…だと？なんという堅固な意志と魂よ…！！」

ヘンドリクセン「ド…ドレファス！！」

ドレファス「我が意志は何ものも断ち斬る剣にして　国を民を子を友を守る盾！！」

魔神族「フフフ…気に入った…どうあってもいただくぞ！！」

ドレファス「フン…できるものならばな！！」

魔神族「方法なら他にある」

ヘンドリクセンに入っていく魔神族

ドレファス「まさか…」

ヘンドリクセンの体を乗っ取った魔神族「ほう？この男はドルイドなのか　悪しき女神共を崇め　我ら魔神を忌み嫌う部族…

なるほど…ふむ…この男にとって貴様は無二の友であり師…んん？貴様の兄もドルイドの生まれか　なあ…ドレファス？」

ドレファス「貴様！！今すぐヘンドリクセンの体から出ろ！！さもなくば…」

魔神「ころすか？クク…それもよかろう　もっともしぬのはこの器だけだが　惜しかったなぁ

ヘンドリクセンがザラトラスのように “浄化” を使えればあるいは…さてどうする　ころし合うか？それとも一緒に酒でも飲みに行くか？」

剣を捨てるドレファス「好きにしろ　だがヘンドリクセンをころせば貴様を必ずころす」

魔神「美しき友情かな…いいだろう　この男の身は保証する…」

目をつぶるドレファス「すまない兄貴…許してくれグリアモール」

ヘンドリクセンから出てドレファスに入る

大穴から出てくる2人

ドレファス「さぁ王国に戻ろう…」

ヘンドリクセン「あ…ああ…」

ドレファス「早く陛下に調査報告をせねばな　”ここに何もなかった” …と」

この話を聞くわんぱく3人組

グリアモールの目からは涙が流れる

ヘンドリクセン「私の意志はすでにその時、奴の術中にあり…王都に帰ると奴は己の脅威になるであろうザラトラス殿の◯害を私と共謀…実行し

七つの大罪に濡れ衣を着せ追放するように至った」

ギルサンダー「でもなぜ七つの大罪まで…」

ハウザー「やっぱ邪魔だからか？」

ヘンドリクセン「そいつは16年前、ダナフォール王国でメリオダスと◯闘を演じるも敗れ去り

密かに生きのび、再び力を取り戻して復讐を果たすその時までの依り代としてドレファスを選んだ

魔神の名はフラウドリン　そしてメリオダスにとって奴は…最愛の恋人を◯した張本人だ」