第5ゲーム、種村のサーブゲーム

栄一郎がドロップショットを決めて15ー15

栄一郎「（よし…！無理したけど決まった！左右だけじゃなく前もあると見せられたのは大きい）」

種村「（…今のは追うつもりでも動けなかった）」

栄一郎「（ここでブレイクし返して追いついて種村さんに体力温存させない！）」

種村「（長期戦を避ける為にも…ここは全力！）」

しなりをきかせた強烈なサーブをワイドへ打つ種村

栄一郎は作戦通り中央深くへリターンする

栄一郎「（苦しくてもとにかく中央深くへ…そして下がって一撃必さつに備えて…チャンスが来るまで中央でチェンジオブペース！）」

強烈な球を中央深くへ返す栄一郎「（スライスやスピンの遅い球を軸に時々速い球でタイミングを外す）」

種村の球が少しだけ甘くなった

栄一郎「（…それでここぞという時1歩前で…一撃必さつを狙う！）」

クロスギリギリへ決め球を打つ栄一郎

追いかけた種村の手は届かなかったが惜しくもアウトで30ー15

栄一郎「（クソ…狙いすぎた）」

種村「（危ない…やっぱりサーブゲームでここまでギリギリを狙われると球は見送れない）」

続いてのサーブはセンターへ

リターンする栄一郎「（またいいサーブだ…）」

強ショットで攻めてくる種村

返す栄一郎「（もう攻め込んできた…後ろから中央へのチェンジオブペースはパターンが限られる…

このままじゃいいように振り回されて最後は決められる…そうなる前に…俺のテニスで何とか抵抗のしようは…ないか…）」

種村はサイド深くへ打ってくる

栄一郎「（パターンが限られてやられてるなら増やすしかない！…だったら3歩前に出て普段の位置に！）」

下がってた位置から普段の位置に出た栄一郎は種村のバックハンド側のサイドへ返す

種村「（前に来た…テンポが急に早まった…）」

クロスに返す種村

栄一郎「（危険だけどここからはアングルも狙いやすい！）」

再びバックハンド側へ返す栄一郎

種村はストレートに決めにくる

栄一郎「（やっぱりここで一撃必さつ狙ってきた…これでお互いオープンコートがある互角の状態）」

種村はオープンコートをカバーするためにも中央へと走る

栄一郎「（…先手の俺は3連続バック側狙いで…前へ！）」

これが種村の逆をつき、種村は返すのが精一杯となる

前に出てきた栄一郎がボレーを決める、30ー30

宮川「うまっ…」

栄一郎「（やった！普段の位置とネットプレーを後ろからの展開に織り混ぜればかなり狙える範囲は広がる

…もちろん相手サーブだし簡単じゃない　だけど種村さんもこれで簡単には攻め込めなくなったはず

理論上はかなりのパターンが増えたってこと）」

種村「（前で勝負してくれた方が決めやすいがこうも急にテンポが変わるとな…

サーブゲームは全力で対応してるのに…更にギアを上げなきゃならない…）」

次の種村のサーブはワイドへ

中央深くへリターンして下がる栄一郎

種村「（今度はまた後ろに…）」

種村の返球が少し浅くなる

栄一郎「（どうする…　…と思ったら行け！）」

種村のバックハンド側へ攻めた球を打つ栄一郎

追いかけて何とか届いた種村

そこからの強ショットが決まり、40ー30

声を上げる種村「よぉし！！」

栄一郎「（あんな体勢でもこんなショットが打てるのか）」

サーブ位置についた種村「（キープすれば次で体力は回復できる）」

栄一郎「（攻撃の時に迷うな…相手はこっちが仕掛けた時を狙ってるんだ）」

センター狙いの種村のサーブはフォールト

栄一郎「（セカンド…）」

セカンドもセンターへ

栄一郎はリターンダッシュする

種村「（今度はいきなりの前か！）」

種村の球はストレートで栄一郎を抜いていくが…

ギリギリアウトでデュース

ホッとする栄一郎「（よし…！また1つ新しい展開を見せてポイントした）」

種村「…」

栄一郎「（でも危なかった…この人はできる限り球に触らせないで決めなきゃいけない

その為には今までよりもっと上のレベルのチェンジオブペースで的を絞らせないようにしたい）」

ハッとする栄一郎「（そうだ…予選の決勝で戦った浅野さんのチェンジオブペース…

まずはあの無数とも言える熟練のパターンを全部コピーしてみたら…

経験の浅い俺が経験豊富な浅野さんのテニスをどこまで実戦できるか）」

種村のサーブはセンターへ

リターンする栄一郎「（パワーも高さもない分、1球1球に意志のあるコントロールが必要！）」

粘って色んな球種で返す栄一郎

観客「すげぇラリーだな」「凄まじい主導権の奪い合いだ」「しかも長ぇ」

栄一郎「（決められなくてもそれがその次の伏線になるように　球威・球種・展開をより極端に変化させて種村さんを迷わせる）」

しかしこのポイントは種村に決められアドバンテージ種村

続いてのラリー

栄一郎「（ノートに記したチェンジオブペースを俺ができる範囲で…）」

栄一郎が決めて再びデュース

続いてはドロップショットを打つ栄一郎

種村が前まで出てきたところをロブで越えてアドバンテージ栄一郎

続いてもドロップショットを打つ栄一郎

種村「（ここでまた前か…！！）」

追いついて返した種村だが、前に詰めていた栄一郎が決める

ブレイクバックした栄一郎、ガッツポーズする「よし！！」

宮川「ま…丸尾くん強いねー…種村さんって人、テクニックもパワーもハンパじゃないのに…」

荒谷「どこまでもつか分からねえが今は守備範囲も普通に広いからな　おっと…でも今のゲームで明暗が分かれたみたいだぜ」

コートチェンジ中、ベンチに座っている2人

種村は息を切らしている

一方、栄一郎はいつも通りノートに書き込んでいる

次のゲームが始まる

テニスをする栄一郎の姿を見ている宮川「（ああ…丸尾くん…本当にプロになるんだね…）」