自宅にて、十数錠の薬を一気に飲む万里花

息を荒らしている「ハァ…！ハァ…ハァ…ハァ…！」

台所には作りかけのチョコレート

その様子を冷静に見ている本田

場面は学校へ

千棘「はいどうぞ、バカもやし」

楽「え…これって…もしかして…」

千棘「もしかしなくてもチョコよチョコ　他に無いでしょ？」

楽「うおおマジか　今年もくれんのか？！」

千棘「あ…当たり前でしょ？私達一応恋人なんだから　何よ要らないの？」

楽「いるいる！サンキューな千棘…！」

千棘「（ふふ…渡せた…　小咲ちゃんと2人で渡せば怖くない作戦大成功…！）」

小咲も渡す「はいコレ私から　おいしく出来てるから大丈夫だよ」

楽「うおおサンキュー小野寺ぁ…！（マジかぁ…！！今年も小野寺からチョコが貰えるなんて…幸せすぎる）」

むっとする千棘「…何か私と小咲ちゃんで反応違くない？」

ごまかす楽「んな事ないって！気のせい気のせい！」

そして席に座り机の中に手を入れる楽「ん？」

するとチロルチョコが1つ入っている

楽「…？コレって…」

後ろの方の席の鶇を見る楽

目が合うと鶇は目をそらす

喜ぶ楽「（…おお！！マジか〜！！鶇まで…！！あいつバレンタインの事覚えてたんだな！その上チョコまで…！あいついい所あんじゃねぇか〜！！

ああ〜今年もこんなにチョコが貰えるなんて…！！義理と分かっていても◯ぬ程嬉しいぜ！！

去年以前の人生がまるでウソのよう…）」

そこで、はたと気づき万里花の席に目をやる楽「…橘のやつ今日も休みなのか？」

千棘「ああそうね　なんか最近休みがちよねあの子　な〜に？まだチョコ貰い足りないの？ぜーたくなもやしだこと！」

楽「ちげーよ　オレは純粋に心配して…」

考え込む楽「（…羽姉に告白されてから早1ヶ月　羽姉とはまた普段通りの関係に戻れつつある

最初はさすがにお互い意識しちまう事もあったけど　ようやく以前の自然さを取り戻してきた所だ

そしてあの時オレは決めたはずだ　橘にも…橘の気持ちにもきちんと向き合わなきゃって…

…でもそれって要するに橘をフるって事で　そんな事言い出すきっかけなんてあるわけもなくて　そもそも橘自身が最近欠席多いし…

キリバスでの事もあるしやっぱり心配だ　本田さんの言ってた事も気になる　アレって一体…）」

千棘「…そんなに気になるならお見舞いにでも行く？私も行くし」

楽「へ？」

千棘「羽さんに聞いたの　あの子本当に具合悪いみたいだし　あの子がバレンタインに学校来ないなんてよっぽどでしょ？

あんたの顔でも見れば少しは元気出るんじゃない？」

一瞬止まる楽「…まさかお前の口からそんな言葉が出るとは」

千棘「なっ…！うっさいわね！あんな子でもいないならいないで落ち着かないからね」

小咲「私も最近あんまり会えなくて淋しいよ　私は今日お店の手伝いがあって行けないけど私の分も行ってきて貰える？きっと喜んでくれるよ」

楽「…そうだな　じゃあ行ってみっか」

そして学校が終わり、玄関から出る楽と千棘

千棘「何か見舞いの品とか持ってくの？」

楽「そうだなまずは商店街に寄って…」

すると校門前に万里花がいる「ラ〜クさま〜！！」

楽「橘…！？お前なんでここに…！？」

万里花「なぜってもちろん楽様をお待ちしていたのですわ♡」

千棘「あんた体大丈夫なの？休んでたんじゃなかったの？」

万里花「午後には良くなりましたので　それに今日は特別な日ですから何としても本日中に楽様に渡しておきたい物がありましたし　秘密のアレを♡」

千棘「チョコね…」

楽「ちょうどお前ん家行こうと思ってたんだよ　お見舞い」

万里花「まぁそうなのですか？そんな心配しなくても大丈夫ですのに　でも嬉しいです！」

歩きだす3人

楽「…それにしても最近よく休んでるけど大丈夫なのか？出席日数とか」

万里花「問題ありません　その辺も計算して休んでいますから」

楽「…計算してんだ」

千棘「体弱いくせに無茶しすぎなのよ　毎度毎度ダーリンにちょっかい出して　もう少し大人しくしたら？」

万里花「そんなの私らしくありませんわ　恋はいつでもフルスロットルなんです」

千棘「…まぁ言っても無駄なのは分かってるけど」

万里花「ところで桐崎さんはいつまで付いてくるんですか？家は反対でしょうしお腹も空いたんじゃありません？」

千棘「反対でも無ければお腹だって空いてないわ！」

楽「そう邪険にするなよ橘　こいつだってお前の事心配してたんだ　見舞い行こうって言い出したのもこいつだし…」

万里花「へ…」

千棘「わっ…！私は別に心配なんか…！」

じっ…と千棘を見る万里花「…何を企んでますの？」

千棘「（こんのやろー！！）私やっぱり帰ろうかな」

楽「まぁまぁ」

その時、万里花の携帯電話が鳴る

画面に表示された名前は橘千花

それを見た万里花の顔

万里花「…なんでもありませんでした」

楽と千棘「いやいやいや」

楽「お前今ものすげぇ顔してたぞ　一体誰からだったんだ？」

万里花「別に…ただ母親がかけてきただけです」

千棘「お母さん？それが何でそんな顔になるわけ？」

楽「そういや橘の母ちゃんて見た事ねぇな　こっちに住んでねぇのか？」

万里花「はい　まぁ…母は九州の実家にいるんです　お世辞にも仲が良いというわけではないので」

千棘「…どんな人なの？」

万里花「どんな…ですか…そうですね　一言で言い表すなら…妖怪、ですかね

軽く千年くらい生きてるんじゃないかって感じの　ババァ妖怪クソバーバって感じです」

反応に困る2人

万里花「あまりまともな人ではないんですよ　良い母親でもないと思います　関わらずに済むなら関わりたくはありませんね」

千棘「で…でも！案外話してみれば話が合ったりするかもしんないわよ？ほらお互いがどう接していいか分からないだけかも…」

万里花「…桐崎さんがお母様と和解できたお話なら聞いていますけれど…そういう相手ではないんですよ　残念ながら」

千棘「…」

万里花「…ところで…ずっと気になっていたのですが桐崎さんかばんは？」

千棘「ほえ？　教室に忘れてきたー！！」

楽「はぁ！？おま…っ！今まで気付かなかったのか…！？てっきり鶇とかに預けてきたのかと…！」

万里花「あらまぁ桐崎さんたら本当におバカさんでいらっしゃるんですから」

走りだす千棘「すぐ取ってくるからあんた達ちゃんとここで待っててよね！万里花！あんた変な事したら許さないから！」

万里花「そういうセリフは普通殿方に言うのでは？」

千棘「あんたは特別よ！」

万里花「…さて…都合良く2人きりになれましたね楽様♡　桐崎さんがアホで本当に良かったです」

楽「（…こいつ気付いてて黙ってたんじゃ…）」

万里花「ではでは早速例のアレをお渡ししましょう…！今年のアレも素晴らしい出来ですよ…！」

楽「いやチョコなんだろ？なんだよアレって…」

チョコを取り出した万里花「ジャ〜ン！！結婚指輪型チョコです！！」

楽「（重い！！）」

万里花「このチョコは人の体温では溶けない特殊な物を使ってあるので実際に指にはめて使う事ができるのです！

サイズも楽様の左手薬指に合わせて作りましたよ♡　現在ペアである私のぶんも鋭意制作中です」

楽「いつの間に測ったの！？」

万里花「それでは受け取って下さい　そして私を恋人にして下さい」

楽「…あのなぁ　だからオレには一応千棘っつー恋人が…」

そう言ったところでハッとする楽「（いや違うだろバカ！！ここだ！！ここじゃねーか！！こいつの気持ちに応えるとしたら…！！

決めただろ！ニセモノの恋人を盾にしないって…！こいつの気持ちに本音で応えるって…！

言うんだ！！オレがお前の気持ちに応えられないのは恋人がいるからじゃなくて…本当は…！！）」

意を決して口に出す楽「…橘！オレ実は…ずっとお前に隠していた事が…！」

万里花「本当は小野寺さんの事が好きなんだ…というお話ですか？」

驚く楽

万里花「…気付いていますよそのくらい　もちろん桐崎さんとのニセモノの関係の事も

ずっと楽様だけを見てきたんですから　…私も今回はそれなりに覚悟を決めて来てるんです

…聞かせて下さい　楽様の答えを」